黒川温泉の人気のひみつ

黒川温泉は温泉街にありがちな歓楽的要素や派手な看板をなくして、全体に統一のある町並み作りをさりげなく、でも計算された積極的なマーケティングのたまものです。

黒川温泉自体の歴史は古く、時代を辿れば、江戸時代までに巡る。

地元の湯治場だった黒川温泉は東京オリンピックの年（昭和３９年）に国民保養温泉地の指定と、やまなみハイウェイが開通し、一時は盛り上がったが、客を引き留める魅力に薄れ、存続も危ぶまれるひなびた温泉地となっていました。

転機は黒川温泉旅館「新明館」の後藤哲也氏が、人々が温泉に「癒し」と「くつろぎ」を求めたいというニーズや、自然の中で開放されたいという欲求があることに気づく、そのためには露天風呂が適しているのではと思い、一人露天風呂を作ることを思いつき、旅館敷地内の山肌に向かい、洞窟風呂を作ることに。

そして、作り込んだ日本庭園ではなく、野の山を再現しようと樹を植えました。

やがてこれが評判になり、新明館が評判になりました。

このような評判を見て、「いこい旅館」の婿養子が、後藤氏に教えを乞い、昭和58年6月、「いこい旅館」は女性専用露天風呂を開設、「美人の湯」として女性に評判になります。

このようにして各旅館も露天風呂を続々と開設して今日のようになりました。

昨今の村おこし、町おこし、は自治体がお客の立場にたった徹底したマーケティングを行わずに税金を使った大資本で大きな器を作って失敗するケースが多いですが、黒川温泉の町おこしは住人の徹底したマーケティングのおかげで、一件の成功ノウハウを温泉町の住民皆で活用することで、交通アクセスがよくない、６０名もお客さんが泊まったら一杯になってしまうこじんまりした山の中の小さい温泉でも、全国からお客さんが訪れる温泉になるということでも、有名になっています。